ボーン・レガシー(トニー・ギルロイ)

 いやー・・・これはあかんやろ・・・という感じでした。こんなんじゃ劇場を出ても「背筋を伸ばして早歩き」になる観客はいないぜ。せっかく美しく完結した物語をあとから濁すようなことにならねばよいが、という不安的中。以下簡単にメモ。
・3作目ですら些か蛇足感があった主人公のモチベーションが今回グダグダ。取り掛かるにはまずそこを整理してからだと思うのですが…
・ライフルのカートリッジ挿入の際、息をフッと吹きかけるのがファミコン世代の俺としては堪らなかった。(ああいう作法ってあるんですか?)
・ヒロインは考えてみたら結構酷いこと(薬物による人為的な行動操作)に加担してるんだけど、いざ自分の身に危険が及んだら所謂「善意の第三者」的ポジションを主張して、主人公も「ならしょうがないよねー」という感じでウヤムヤになってしまうのが、あれはいいのだろうか?問題意識として?『フィクサー』を書いて撮った人が?真剣にそのことを追及するような作品でもないけど、娯楽作品の範疇でいいから何かしら落とし前を付けてほしかった気がします。
・役者がもったいなさすぎ。まずせっかくオスカー・アイザックが何か腹に一物ありそうな雰囲気で登場するのに、ほとんど何もないまま退場しちゃう。それにエドワード・ノートンだったらもっと「この人に目をつけられたら諦めるしかない」という怖さが出せたと思うのだけど(だからこそ盛り上がったはずなのに)、悪いことするのに躊躇しないだけで実際は無能だし。何というか、タイプキャストで配したはずなのに、「典型」というその機能すら果たせないまま、というのは役者さんたちも結構ストレスだったのではなかろうか(まあ最終的に仕上がるまで分からないものなのでしょうけれども)。
・日系のルイ・オザワ(プレデターズの忍者ヤクザ)がヒットマン役に登板!と期待してたけど、これまた目立った活躍ができないまま退場。カール・アーバンはあんなに格好良く撮ってもらってたのになあ・・・
・という訳で、実は僕もアクション担当の第2班監督※1がしっかりしていれば最低限そこそこ面白い映画にはなってるんじゃないか、と甘く見ていたのですが、やはりメインの監督がしっかりしてないとアクション映画といえどもいい作品にはならないものなんですね。今回勉強になりました!
☆☆1/2
※ 考えてみたら逃走→状況分析→反撃というボーン・シリーズの枠組みの中で、「反撃」に該当するパートがないのが一番のガッカリポイントだったんだな。そりゃカタルシスないよ。なんじゃそれ。
※1 ボーン・シリーズから続投のダン・ブラッドリーだったので。