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密告・者(ダンテ・ラム)

 潜入捜査ものというのはアクションよりも登場人物の葛藤のドラマに重きが置かれるものですが(と書いた瞬間『ワイルド・スピード』を思い出してしまった。まあそれはそれとして…)、例えば『インファナル・アフェア』がサスペンス醸成のため、あえて作り物めいた物語の様式美を優先させていたのに比較して、この作品は「抜き差しならない状況」の設定が巧みでリアル。各々の抱える事情が互いを縛りあうがごとく、匠の技のように実に周到に構築されています。主だった人物の誰もが「ここではないどこかでの人生」を渇望していながら、義理や情けに対して非情になれないあまり、そうと知りつつもポイント・オブ・ノー・リターンへ向かってまっしぐらに突き進む…
 父親の借金のかたに苦界に身を沈めた妹のために密告者となるニコラス・ツェーも折々にみせるナイーブさが切なくてよかったのだけど、密告者のハンドラーであるニック・チョン※が仕事と割り切れずに苦悩する様が最大の見どころでした。彼は私生活にも大きな秘密を抱えているのですが、とくに事実上のクライマックスといっていい「悪夢のピタゴラスイッチ」的展開には胸を突かれる思いがしました。
☆☆☆1/2
※このブログで何度かお薦めしている『コネクテッド』の刑事役(『セルラー』でいうとウィリアム・H・メイシーですね)やジョニー・トー作品などでも脇を固める渋い役者さん。この映画でまた一層好きになりました。