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DATSUGOKU 〜脱獄〜(ルパート・ワイアット)

 タイトルだけ見たら、一山いくらで買い付けてきた最近のセガール映画みたいだけど、『猿の惑星 創世記』の監督の出世作ということで観てみました(原題:The Escapist)。『創世記』は思わぬ傑作で、映画とはまずもって画で語るメディアだ、ということを改めて思い起こさせてくれる、その的確な語り口が実に心地良い作品でした。考えてみたら『創世記』のある側面は脱獄もののヴァリアントである訳で、この映画を観て監督を抜擢した人は慧眼と言わざるを得ない。
 さて、物語はいきなり脱獄に今まさに挑戦せんとする5人の男たちから始まる。あれ?脱獄を準備するエピソードがごちそうなんじゃないの?※と一瞬その大胆な展開にとまどいますが、ほどなく時制は巻戻り、「なぜ男たちが脱獄を決意するに至ったか」の過程を脱獄のリアルタイムな進行と並行して描くスタイル、であることが分かります。
 その脱獄までのエピソードですが、看守すら意のままにする凶暴な牢名主と、姑息かつ蛇のような狡猾さで囚人たちから忌み嫌われているその弟を敵役とした人間関係のサスペンスとして専ら描かれます。・・・ところで、先に書いたとおり、少なくとも脱獄にはメンバーが間に合っていることを観客は既に知っている訳で、誰が脱落してしまうのか?という物語の求心力がこのスタイルだと減衰してしまう・・・と思わせて、それでもグイグイ見せてしまうのが映画というものの面白いところ。『創世記』でのストーリーテリングの巧みさ、なめらかさはまぐれ当たりではなかったことを教えてくれます。
 ただ難点もありまして。一番残念なのはプロットのご都合主義的な要素が明らかな瑕疵として目についてしまうところ。これからご覧になるかもしれない方のために詳細は省略しますが、あと少しの工夫でなんとかなるレベルなので、そこは脚本の練り込みを粘ってほしかった(脚本も監督自身による)。それとやはり(『創世記』の洗練を目にした後だからということもありますが)、語りに荒削りな点があることも否めない。
 しかし自らプロデュースを買って出たブライアン・コックスを始め、ジョセフ・ファインズドミニク・クーパーなど映画ファン好みの渋い出演陣の好演もあって、メジャーな風格を備えた作品になっていたと思います。お薦め。
☆☆☆1/2(『創世記』との相対評価で。もっとプラスしてもいいかも)
※結末は結局のところデザートですよ。