フライトナイト:恐怖の夜(クレイグ・ギレスピー)

 いやー快調快調!予想外の佳作でした。オリジナルの方は、80年代に映画を自分で選んで見始めた頃の幸せな記憶と渾然一体になっていて(『ロストボーイ』なんかも同じフォルダ)、その懐かしさだけで足を運んだのだけど。大傑作という訳ではないけど、これくらい肩の力を抜いて楽しむような娯楽作もいいものですよね。最近は『リアル・スティール』しかり、王道、直球を恐れないストレートな作品にいい映画が多いような気がします。
・ヒロインはハキハキと可愛らしい女の子、しかしどこかで・・・と思ったらイモージェン・プーツだったんですね。(『センチュリオン』の儚げな感じとはまた全然イメージが違ったなあ。)しかし「見栄えがいい男が好きだと思ったの?違うからあなたが好きなのに」と主人公を全肯定。しかも要所で共に戦ってくれる女の子・・・どんだけ天使やねん!という感じ。作品的には大正解でしょう。
・ところで物語上ヒロイン造形の工夫が光っていたのは、主人公の真摯な態度に接して、ごく初期からヴァンパイアの存在を信じてあげるところ。下手な映画だとそこら辺の行き違いをダラダラ引っ張ってイライラさせられるところですが、「主人公の中に芯のあるところを見出しているからこそ付き合っている」という部分とちゃんとリンクしていて、単なる都合のいい美少女にはなっていないのが巧い。
・人生におけるプライオリティの変化で、長じるにつれ付き合う相手というのは何時しか変わっていくものですが、それが成長というものであって必ずしも否定されることではない、というこれまた青春映画王道テーマ。見栄えがいい仲間にすり寄るでなく、(意外とこちらの結論に至る作品も多いのだけど)自分が好きだと思うものに恥じることなくのめり込めばいい、と逆行するでもなく、彼女を含む大人の世界に一歩踏み出すことを選択します。
・ということを踏まえると、ほとんどあて書きのような永遠の「大人になることを断固拒否する男」クリストファー・ミンツ・プラッセ(『キックアス』『スーパーバッド』のメガネくん)演じる幼馴染とのエピソードはそのテーマを裏書きしているような。
・オリジナルでは助っ人のピーター・ヴィンセントが、いわゆる「サボテン・ブラザーズ」キャラとしてヴァンパイア・ハンターは本職じゃないのにいつしか・・・というところが盛り上がりポイントだった訳ですが、リメイクでの彼はちゃらちゃらしたロックスター気取りのマジシャンでがっかり。と見せかけてその造形にはツイストがあって、生い立ちが明かされてからの展開は負けずに熱かった!ここもリメイク作品として評価したいポイント。
・唯一残念だったのはコリン・ファレル演じるヴァンパイアかな・・・本来なら「優男なのに常軌を逸する怪力」というのがヴィジュアル的な見せ場だと思うのだけど、元々マッチョでギラギラしているから意外性がないというか。
 ともあれ、特殊造形がご馳走だった時代の雰囲気をよく再現しているし(一方でVFXを活用した気持ち悪い「人外の挙動」も上手)、単純なんだけどツボを心得たサスペンス演出も的確(ドリスとの脱出シークエンス!)でリメイク作品としては理想的な出来栄えではないでしょうか。
☆☆☆1/2(4つでもいいと思ってます。)