リアル・スティール(ショーン・レヴィ)

 基本に忠実な、これ以上ないくらいストレートなストーリー。演出が的確ということが大前提だけど、衒わないことの力強さを感じさせる作品でした。
 ボーモントやマシスンといったトワイライト・ゾーン関係の作家(グループ名失念…)は、ギャンブルやスポーツといった世界で「ある瞬間」を追い求めて、そこにたどり着くためには何を犠牲にしても構わないという人々の陶酔にも似た破滅的な道行の物語を好んで描いているという印象があるのですが、この映画の原作もそういう匂いのする小説でした。そこからかなり改変されているのは予告編からもわかっていたのですが、実際に見てみたら、「ろくでなしの父親と、過去の経緯から世間に対して斜に構えている子供のロードムービー」という(僕は『ペーパームーン』を思い出したんだけど)これまた王道の物語に書き換えられていました。  
・音楽はダニー・エルフマン。今回はエルフマン節を封印。むしろビル・コンティ風というかロッキーチックな。
・もちろんお母さんは優しくて素晴らしいひとだったけど、この人(ヒロイン)の存在もあって、お父さんにもいろいろあったんだろうな、と11歳の子供なりに状況をある種の諦念とともに受け止めている・・・ということをスッと分からせる導入の演出が素晴らしい。それ以上にダコタ・ゴヨがすごい。こういう映画が作られるたび天才子役が喧伝されるけど、ハリウッドは本当に層が厚いですね。
・少年を養子にしたいというおばさんが悪役じゃないので気持ちよく見ることができました。
・一方、敵役である天才ロボットクリエーターやそのパトロンのお嬢さんは笑っちゃうような「未来的な」服装含めて見事に80年代風。
・マックス少年がどうしてもアトム(主人公が操るロボット)にこだわる理由というのを映画としては説明する必要があるけれど、偶然命を救ってくれたことに運命を感じて、という切っ掛けづくりに始まって、ロボットは友であり、かつ少年が今まで求めても得られなかった父性の対象でもあるという描写がとても丁寧。そこから実の父親との距離が縮まるにつれ、役割がバトンタッチしていくという展開が上手い。
・という訳で、原作の結末をあのような形でアダプテーションするのはありだと思いました。というか、ああすることでギリギリ原作付きということの帳尻を合わせたという感じかな。
・ひとつひとつはありきたりなエピソードなんだけど、想定される消化すべき要素を適切なタイミングで挿入してくるので、ストーリーテリングは実にスムーズ。例えば、当然マックスには屈託もあるので、距離を置いてお父さんのことはチャーリーと呼んでいるのだけど、となれば、そんな彼がチャーリーを「お父さん」と呼ぶのが最大の泣かせどころというのは大体想像が付く訳ですが、それでも実際「お父さん」と呼ぶシーンを見ると泣けてねえ・・・監督良く分かってるなあ。
☆☆☆☆