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狼たちの処刑台(ダニエル・バーバー)

 先日のロンドン暴動を予見するような内容でもあり(09年製作です)。不穏な空気は映画として取り上げられるほどにリアルなものとしてあちらでは感じられていたということでしょうか。邦題に「狼たちの」という枕詞が振られていることからも察せられるように所謂「ヴィジランテもの」なのだけど、溜りにたまったフラストレーションが最後に爆発!みたいな分かりやすいカタルシスを与えてくれるでもなく、予想以上にダウナーな作品でした。
 色気を封印したマイケル・ケインの枯れぶりが味わい深い。総じてキャストが地味なのもかえって好印象。中でもとりわけ麻薬と銃のディーラーを演じるショーン・ハリスの生々しいイキッぷりが素晴らしく、印象に残ります。
 ところで物語のツイストとして最後に用意されている展開は、いくらなんでもそういう件について主人公が知らないわけはないだろう・・・と一瞬シラけそうになったのだけど、考えてみたらその頃は英国海兵隊としてその人生を国に捧げていた渦中の時期であって、ようやく自身の家庭を省みようと思った時には既に家族はなく、かつてはそのために戦っていたはずの属すべきコミュニティも崩壊していた、という皮肉がこの作品のテーマだったのかなと思い直しました。※
 大傑作とはいえないまでも、佳品として一見の価値はある映画だと思います。
☆☆☆1/2
※主人公が北アイルランド紛争に従事していたという点と、舞台である貧しい集合住宅という小さく閉じた世界から脱出するために警察を選んだ巡査部長を巡る顛末もそれを補強しているような気がします。