アレクサンドリア(アレハンドロ・アメナーバル)

 ここまで直球でキリスト教に対してシビアな視点で作品を作るというのも、随分肝が据わったことだなと、まず真っ先に思いました。これは完全に邪推ですが、監督はゲイをカミングアウトしている人でもあるので、悪い意味でのキリスト教の厳格さに不愉快な思いをしたことがあったのではなかろうか。(とはいえ、スペインはカトリックの国としては同性婚などにもおおらからしいのですが・・・)
オスカー・アイザックは『ロビンフッド』や『エンジェルウォーズ』でのギラギラしたイメージの先入観からすると、随分繊細で知的なキャラクターを演じていて驚かされました。※ びっくりしたという点でいうと、『ソーシャル・ネットワーク』ではコメディリリーフ的な賑やかし(子分)キャラだったマックス・ミンゲラも全く違う印象でしたね。役者ってすごいよなあ。
・すごいよなあといえば、アシュラフ・バルフムは『パラダイス・ナウ』ではイスラム原理主義者を演じていたのに、『キングダム/見えざる敵』では理知的なサウジ国家警察の大佐役だったので、映画とはいえ役者って何でもありなんだな、という感想を書いたのだけど、この映画ではキリスト教原理主義者じゃないの!何でもありにもほどがあるよ!(もちろん褒めております。)
・暗躍するキリスト教徒を俯瞰でアリみたいに撮ってる画が面白かった。画で語るテーマという観点からも。
・思うに、この作品でのキリスト教というのはグローバリゼーションの醜悪さを仮託して描いたのではなかろうか?
 とはいえ、史実に基づいているとはいっても大部分を想像で補っている訳で、真に受けすぎるのもちょっと危険なことだと思いました。
☆☆☆1/2
※『エンジェルウォーズ』のブルーは、本当はこの作品でのオレステス並みに奥行きのある人物にしたかったのだけど、ザック・スナイダー力及ばずってところだったんじゃないかなあ・・・(ブルーレイのコメンタリーを聞くと。)