赤い天使(増村保造)

 若尾文子を観る(俺内)シリーズ。今回は相当ヘビーな内容。しかしどこのエロゲーかと思わされるようなエクストリームなプロット、というか「野戦病院でのやさぐれ軍医と従軍看護婦プレイでお願いします」みたいな。犯されようと、血まみれになろうと、自らの信ずる愛を貫き通す看護婦の物語。
 とはいえ、戦争の真実を抉り出す、みたいな作品だとは思えなくて。フィルモグラフィーを辿っても、増村監督の興味は「極限状況での男女の人間関係」に一貫してあるような気がします。(だからといって戦争という状況に無関心とまでは言わないけれど。)そして、下着で俺と添い寝してくれって言っておきながら、「今の俺は女に興味がないんだ」ってそれはありえないだろう!という軍医どののツンデレぶりを愛でる映画でもあります。 
 ところで自分のことを「西は」っていう主人公がとても可愛い(見事上司である軍医のインポテンツを克服させて「西が勝ちました!」っていうのはこの映画最高のキラーワード)。その上軍服コスプレ!でも正直いうとヘビーな話より、『青空娘』みたいな爽やかラブコメの方が文子はかわいいぜ・・・
☆☆☆
※特典のミニインタビューで若尾さんが「当時は汚しすぎじゃないかしら?って思ってたけど、今観るとこちらのほうが自然ですよね。そういうところも監督は先取りしてらして」と語っていました。今は状況に見合ったプロダクションデザインとか衣装は当たり前だけど、この当時はきれいきれいに撮り上げるのが普通だったと考えると、(耳目を集めがちなセンセーショナルな部分だけでなく)先駆者の努力によって切り開かれた表現というのは確かにあるのだなと思います。
※特にフランスでの評価が高いということなんだけど、僕はどうも純粋に作品のテーマに共感して、というよりは(大島渚三池崇史のある種の作品の評価にあるように)オリエンタリズム〜モンド趣味の文脈なんじゃないかと思われて・・・