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大人のまじめなカバーシリーズ(安藤裕子)

 昔からのファンには邪道の謗りを免れ得ないと思うのでスルーしていただきたいのですが、冨田ラボから入った人間なのでご容赦を。アルバムそのものより、聞いてつらつら思ったことを書きたいと思います。
 安藤さんはどちらかというと憑代系の歌唱法、いい意味での異物感が持ち味のアーティストだと思うのですが、冨田ラボでの「あの木の下で会いましょう」はそういう声をエレメントの一つとして取り込んでしまうような、ガチガチに構築されたポップスという一種倒錯した構成が魅力でした。いわば文字通りの客演。※
 一方、こちらのアルバムでは原曲を安藤ワールドに引きずり込む豪腕ぶりが面白い。カバーのスタンスとして、原曲を1.今のセンスでリファイン、2.再解釈という二つの側面があるとしたら、後者の比重が大きい方が好ましいと思っているので(極端な話、イントロから原曲が連想できないくらい離れているほうが好き)、これは良かったですね。
 「林檎殺人事件」はコミックソングのフレームの中でやり散らかしてる感増量という塩梅で、声もはまってました。ところでこの曲って進行が「北酒場」と同じじゃないですか?今日のJポップが成立する過程の系統樹で、→歌謡演歌、→ニューミュージックと分化していく分岐点みたいな感じがしました。
 「君は1000%」はベストテン世代の自分にはど真ん中だった点(というかこのアルバムのカバーチョイスはかなりグッとくる)と、こうきたか!という心憎いアレンジのダブルパンチ。一番のお気に入りになりました。世代の話でいうと、「君に、胸キュン。」については土岐麻子、「Woman 〜Wの悲劇〜」は畠山美由紀という(どちらかというと通好みの)アーティストもカバーしていて、スタイルは違えどもその辺りの楽曲が共通体験になっているのかなと想像すると興味深い。
 最近、その昔親が「最近の若い人の曲はみんな一緒に聞こえるねえ・・・」といっていたのと同じ感覚になってきたのですが、そうはいってもやはり80年代のポップスの完成度の高さは素晴らしかったのだと、今になって改めて噛み締めております。そういう意味でもお薦めです!
☆☆☆1/2
※その点、(歌手としてはクセのなさが若干物足りなくも感じる)坂本真綾「ムーンライト」での「エレメントに徹している感じ」と比較すると面白いような気がしました。