ゲット・カーター(テッド・ルイス)

 裏社会ではその名を知られたジャックが故郷に帰ってきた。不自然な死を遂げた兄の、その理由を探るため、そして復讐を遂げるため・・・
 リメイクにあたる『追撃者』はほとんど話題にもならなかったけど、淡々とした無駄のないストーリーテリングが好みで、年に何本かはこういう「大傑作ではないけれど佳作」みたいな映画が観たいものだと常々思っているものです。(ところでセガール作品における『沈黙〜』みたいに、漢字三文字シリーズで売りたいという意図があったのかな?『ゲット・カーター』で良かったんじゃないの、と当時も思ったものだけれど。)
 さらに脱線しますが、当時この映画がリメイクされた経緯で僕が目にしたのは、オリジナルである『狙撃者』のロイ・バッドによるサントラが英クラブ界隈で再評価されて「そういえば映画もクールだったよね!」と盛り上がり、リメイクに至ったというものでした。しかしこの小説の解説によると、『狙撃者』はもともとカルトクラシックというのでもなくて、確固とした人気作なんだそうで。いつかは見てみたいものです。
 さて本題のこの小説ですが、「筋を通す」というより「落とし前を付ける」ことが目的になってるのか、主人公がその探求の過程で周りの人間を巻き込んでも一行に平気なのが引っ掛かって、ちょっと乗れなかったというのが正直なところでした。ハードボイルドやノワール好きということを感想でよく書くのだけど、(勧善懲悪でなくても構わないのですが)「ニヒルさ」については一定のラインがどうやら自分の中にはあるのだなと気付かされた感じ。たまたま「復讐もの」を平行して読んだり観たりすることになったけど、『ポイント・ブランク』はその点「あり」の線引きでした。
 ところでマイケル・ケインがジャックを演じている『狙撃者』ではそのニヒルさが徹底されているらしく、実際に観てみてもやっぱり楽しめないのかなあ、スタローンくらいがちょうど良いのかも・・・と思ったり。さもありなんと思ったのは、マイケル・ケインの役柄は「ジョークも解する英国紳士だけど、目的のためなら躊躇なく非情になれる、どこか得体の知れない男」というのが特に全盛期には多かった、ということを最近過去の出演作を観るようになって知って。なので、リアルタイムで接した『殺しのドレス』なんかはそのイメージを借景として上手くキャスティングしてたのだな、ということを今頃納得してます。
 かなり回り道の感想でしたが、ノワールとしては水準作という印象。ちょっと救いがない話ですね・・・
☆☆☆