ソーシャル・ネットワーク(デヴィッド・フィンチャー)

 あえて大胆に書くとセミ・ドキュメンタリー版『ナーズの復讐』という感じでしたね。そういう話ばかりを期待して見に行った訳ではもちろんなかったのだけど、「自信満々の温室育ちのジョックスどもに一泡吹かせてやろう」(その一方で仲間入りすることに憧れてたりというのがリアルで複雑なんだけど)、とか、「立身出世物語」(これは本題かな)の側面がちらほら顔を見せるとやっぱり否応なく盛り上がるんですよね。そういえば、先生が難しい話をしている最中に主人公が退席しようとするのを見て「早速脱落者一号か」というと「その答えなら○○です」と即答しながら扉をバターンと閉める、というシーンなんかも「ベタな展開だけどやっぱり燃える!」場面でした。
 冒頭、フェイスブックを立ち上げるきっかけとなる、彼女との諍いの場面。主人公の人となりがありありと浮かび上がってくるダイアローグが実に見事で、脚本はもちろんのことフィンチャーの演出の的確さにクラクラきました。「掴み」って本当に大切。 ただ、こういったエキセントリックなキャラクターを強調しすぎると(いわゆるアスペルガー的とされる行動の記号表現なんですが)物語のドライブを阻害すると判断したのか、進行するにつれやや常識人としての範疇に収まってしまいます。それと入れ替わるようにトリックスターとしての役目を一手に引き受けるのが、ナップスター創設者のショーン・パーカーで。メフィストフェレス的なうさんくささが堪りませんでした(J・ティンバーレイクは想像以上に上手かった)。
 なんだけど・・・ごくリアルタイムな話であるため、劇的な起承転結があったり(当たり前だけど)時をかさねた人生の重みが感じられたり、という妙味には乏しかった印象で。それでもダレずに長尺を見せ切るのは監督の膂力あればこそだとは思うのですが・・・
☆☆☆1/2
※えぇ・・・ここでもVAIO?コロンビアとはいえそれはちょっと・・・(ってなったのは僕だけじゃなかったようで。)
※双子のボンボンはCG合成。こういうさらっとした技術の使いこなし方がフィンチャーですね。