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河童のクゥと夏休み(原恵一)

 あえてキャッチーでないキャラクターデザインを選択するなど、かなり野心的(作品の雰囲気自体は全然そういうトーンではないけれど)なつくりになってましたね。また、家族写真を2枚撮るそのインターバルにお母さんが幼い娘の髪を梳いてあげるところや、ダンボールを抱えたまま改札を通るときに片足で一瞬支える仕種など、(『トイ・ストーリー3』の感想でも、ほとんど神がかっているようなディテール演出の素晴らしさについて書いたのだけど、それに比肩する)繊細な演出に鳥肌が立つような興奮を感じました。
 登場人物の造型では、やっぱりクゥのどんなに過酷な状況にあっても他人を恨むことをしない純朴さと真っ直ぐな心根に心を打たれたし(訛りがかわいいんですよね)、彼を迎え入れる主人公一家も(必ずしも弱いところがないという訳ではないのだけれど)愛犬オッサンが評するように「わるいやつらじゃない」のが見ていて心地良かった。考えてみたら、アニメの監督は「ゼロから画を起こす」という点で画作りの側面に注目が集まることが多いように思うけど(そうでもないのかな?)、声優経験のない子役のポテンシャルを引き出す原監督の演出スキルというのは相当なものがあるのではなかろうか。
 ところでネットで感想を見ていると、「テーマについて絞り込めていない」とか「要素を盛り込みすぎ」という評もあるようですが、(他の映画だとそういう意見に与するかもしれないけど)この作品に関して言うと、人生においては解決すべき問題はそうそう都合よく順番にやってくるものではなくて、得てして持て余すほどに一緒になってやってくるものなのだというシビアさを反映しているのではないかと受け止めました。
 正直なところ、オッサンとクゥの逃避行から結末までは鼻水垂らしっぱなし。涙を絞られるとは正にこのことなんだけど、ことさらに泣かせようというゴリ押しではなく抑制の効いた演出であるところがまた良かったですね。そして声優としての西田尚美も最高。お母さんの強さに救われる思いでした。
☆☆☆☆1/2