セックス・クラブ(クラーク・グレッグ)

セックス・クラブ(特別編) [DVD]
 邦題は目を惹くタイトルで手にとってもらおうという狙いなんだろうけど・・・チャック・パラニュークの『チョーク』の映画化です。センセーショナルな要素で読者(観客)を撹乱しながら、最後は人の心の核心に迫るようなグッとくるポイントに収斂させるというストーリーテリングは見事にパラニューク作品でした。
 一番好きだった場面は、セックス依存症仲間の親友が「本当の恋に落ちた」というストリッパーのベスに対し、「キリストって実は若い頃は結構イヤな奴だったのかもしれないって思わない?」と尋ねるシーン※。幼い頃からの特殊な生育環境のせいで、万事に対して冷笑的なものの見方をしている主人公。それに加えて母親が死にそうだったり、仕事も好きな女の子とも上手く行かなかったりというハードな状況も相まって、やさぐれた気分での発言なのだけど、ここでベスが思いもよらぬ明晰な回答をくれます。主人公は、明らかにベスから実のある返事をもらおうとは期待していなくて、それどころか、周囲の人間みなを侮っているところがあるのだけど、ベスの答えを聞いて初めて「世界は自分が見たままじゃない」という洞察(というかキリストの話だから天啓かも)を得るんですね。ここから主人公を取り巻く世界がパタパタとオセロのようにひっくり返っていく展開はとても素晴らしかった。
 今年も『月に囚われた男』『アイアンマン2』と好演が続いたサム・ロックウェルが主人公をここでも見事に演じています。本当に上手い役者さんやなあ・・・ちょっと残念だったのはヒロインがもっとチャーミングな子だったら、という点かな。実は監督も出演しててというか、役者さんで、「アイアンマン」のシールドのエージェントのあの人です。
☆☆☆1/2
モンティ・パイソン的?な「そういうことをいいそうもない人がとても素晴らしいことをいう」というスケッチ風のトーンで演出されているのが難だけど・・・