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ポーカーはやめられない(V.A)編者:オットー・ペンズラー

 アンソロジーはやっぱり玉石混交ということが多くて、特に(この短編集もそうですが)「発注系」ではまあ3つくらい良いなという作品があれば上出来だと思うのだけど、そういう意味では十分以上に充実していたという印象でした。
 さて、今回のくくりは「ポーカーを扱っていればその程度は問わない」というごく緩い縛りだったため内容もバラエティに富んでいました。好みを語ると、(『ハスラー』の二番煎じの印象を拭えない)『シンシナティ・キッド』より『ラウンダーズ』を愛する人間なので、そういう物語を期待して読んだのですが・・・以下、特に気に入った作品の感想です。
 プロの「運び屋」ヴィンセントはある日、「絶対に儲かるポーカーへの参加」という奇妙な依頼を受ける。ところが現場に現れたメンバーはNY裏社会の顔役ばかりで・・・ウォルター・モズリイ『ミスター・ミドルマン』:裏社会で生きるプロがサバイバルの為に自らに課したルールとその世界の作法みたいな話が実は大好物で、それが本当かウソかはともかく、ディテールが充実していればいるほど嬉しい、という人間なのでストライクど真ん中でした。「その世界」での師弟関係と仁義みたいな描写もグッときた・・・のだけど、肝心のポーカーが開催される理由が苦しかったのが残念。☆☆☆1/2
 盛りを過ぎたTV俳優オコナーは生中継のリアリティTVのオファーを受ける。それは自前で用意した25万ドルを元手に6名がポーカーで勝負するというものだった・・・J・ディーヴァー『突風』:実は世間で言われるほどディーヴァーの作品はピンときてなかったのだけど、これは良かった!それぞれキャリアが難しいところに来ているという設定の参加者がいかにもな面々(商売上悪ぶっている大学出のギャングスタ・ラッパー、やんちゃが過ぎて持て余されているハリウッドスター、スレスレのトークが人気の女性コメディアン等)で面白い。正面切ってポーカーの駆け引きをじっくり描写しているところも好印象だったのですが(他の収録作でも意外と少なかったのです)、その上(映画好きには特に)なかなか気が利いたツイストも用意されていて大サービスでした。コンパクトにまとめた手腕を賞賛したい。☆☆☆☆
 老ギャンブラー、シャイニーは堅気の余生をおくるため、然るべき金額を稼げる場を求めていた。何とか金持ちサークルのポーカーに紛れ込むことに成功するが、人生最後の大勝負に立ちはだかったのは、彼のかつての栄光を知る若手プレーヤー、ロンドンだった・・・サム・ヒル『元手』:トーナメントには出場しない真剣師のプライド、みたいな描写がこれまたグッとくる。読んだときはこれこれ!となりました。平たくいうと『ラウンダーズ』みたいな世界観ですね。これだったら長編でも読んでみたい。☆☆☆☆1/2
 ただ全体としては、ツイストありきな馬脚を現してるカルカテラの作品があったり、ヒッチコック劇場みたいなジャスト水準作(雰囲気は好きでした)の『ヴィクトリア修道会』があったり、と全てがとても素晴らしい訳ではなくて・・・でも繰り返しになりますが、一読の価値があるアンソロジーではあると思います。
☆☆☆1/2