ブラッド・ブラザース / 刺馬(チェン・チェ)

 途中まで見たところで、あれこの話前に・・・ってなったのだけど、ちょっと前に見た『ウォーロード』(傑作!)のリメイク元だったんですね。(結末に触れます。)
 その日暮らしの気ままな山賊生活を続けるチャンとホアンの兄弟。彼らがある日襲撃した男は凄腕の武芸者マーだった。「金ならやる。だがそれだけの使い手なのに、こんな暮らしをいつまでも続けるつもりか?男なら大志を抱け!」意気投合し、義兄弟の契りを交わす3人。金持ちになりたいという漠然とした夢に形を与えてくれたマーに、兄弟は命がけで尽くす。しかしマーが将軍の地位を得、あげくホアンの妻と通じるに至り、彼らの絆には影が忍び寄る・・・
 『ウォーロード』では、この作品でいうマーの役であるパンは、太平天国軍に破れ、独り生き残ってしまった敗軍の将で、「混乱した世の中に秩序と平安を取り戻すこと」が生きるモチベーションであり、行動原理になっています。そんな彼が、非情な選択を迫られる場面で、当初、大義のためには仕方ないと下した判断が、やがて自己欺瞞として自らを蝕んでいく、という過程が苦くて、ただのスペクタクル・アクション映画に留まらない人間ドラマとして見応えのある作品になっていました(ジェット・リーがとても好演!)。シュー・ジンレイ演じるヒロインとの関わりも、互いの孤独を癒すために止むにやまれずという切迫した印象があり、後半はとりわけ痛々しい物語になっていた気がします。
 というように、リメイク作品がかなり良い出来で、先に観ていたために、オリジナルに接しての感想は・・・製作年の時代もあると思いますが、まずマーのマキャベリストぶりに全く共感できない。「こんなことなら功成り名遂げた後に、兄弟を迎えに来なかったらみんな幸せだったのに」という思いがどうしても拭えない(これはリメイク版でも感じた点なのですが・・・)。加えて、ヒロインの「あの人との結婚は若気の至りだったの」という言い種の安さも、まあそうなんだろうけどさあ・・・とシラけてしまって。
 ただ、結末、普通なら「マー暗殺のかどでチャンが処刑されるシーン」でスパッとエンドになりそうなところを、執行したマーの腹心の部下たちが「ずっと前からこうしてやりたかったんだ、山猿め!」みたいにニタニタしている場面のストップモーションで終劇、という非常にもやもやした感じが残る終わり方(あえてそうしているのだと思うけど)なのが独特な感触でした。その辺りがチャン・チェのセンスなのかな。
☆☆☆
・マー役のティ・ロン石川遼に見えて仕方ない・・・
・タイトルが「馬刺」って出るので思わず美味そ!ってなりましたよ。