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インセプション(クリストファー・ノーラン)

 本来『メメント』的な規模でさらっと撮るのが望ましい話であるところを、監督や出演者の格とか、『ダークナイト』の後だからといった事情で、物語上要請される以上の規模の作品になってしまった、という印象でした。もちろんビッグバジェットのおかげで撮れた、「実写塊魂」的なあのシーンや、ドラえもんひみつ道具を彷彿とさせる無重力バトルの場面はすごく魅力的だったのだけど、尺の長さ含めて(雪の要塞のシーンは丸々いらなかったのでは?)バランスが悪い気がして・・・以下ネタバレ含む感想メモです。
・ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは本当に格好良かった。今作で一般にもブレイクするのでは?
・ケイパーもの定番の仲間集めシーンはやっぱりワクワクしますね。しかし海千山千の奴らのはずなのに、リーダーの不安定さに誰もダメ出しできないというのはチームとしていかがなものか。いい人すぎるだろ・・・
・「彼らは目覚めに来ているのです」という、調合士の秘密の部屋でひと繋がりになった睡眠者たちなど、奇想をビジュアル化したシーンにはグッとくるところもあったのだけど。
・失敗の報復として主人公をどこまでも付け狙う、サイトーへの潜入を依頼した組織は、抽象的な存在故の不気味さが魅力的※1だったのだけど、その一方でロバートの会社は割りと具体的な実態を備えている、という描写と省略のレベルの不整合が個人的にはスッキリしなかった。
・冒頭シーンは、サイトーをサルベージしに行っていたのだ、という円環構造だと思うのですが、ロバートに潜っていたのだから「心の世界」の構造上矛盾してないのかなあ・・・どなたかがバシッと説明してくれるのをお待ちしております。
・奇しくもディカプリオはまたもや「妻への妄執とその訣別」がテーマの作品の主役に。『シャッター・アイランド』はありだったのだけど、今作は妻のキャラクターに共感できなかった※2ため、映画全体を飲み下せなかった。この部分を是とするか否かが作品の評価の分かれ目のような気がします。
追記:フィルモグラフィーから考えるに、ノーラン監督は、個々の事象とか事件よりも「世界の成り立ち」を語ることに主眼があるのではなかろうか?・・・ということは、誰かがどこかでもっと気の利いた言い方で論じてたような気もする。
☆☆☆1/2
※1 終始不条理なトーンが一貫していたヴィンチェンゾ・ナタリの『カンパニー・マン』はその点で大好きでした。
※2 というより単純にマリオン・コティヤールが苦手なのかも。TAXiのときからむしろ女刑事派だったし・・・。「キック」となる音楽がエディット・ピアフって直球ですよね。