無ケーカクの命中男/ノックトアップ (ジャド・アパトー)

 TVのエンターテインメント番組で制作アシスタントを務めるアリソンは、昇進の内示をもらったその日、浮かれ気分もそのままにクラブに繰り出す。そこで知り合ったのは、映画サイトでの起業を夢見るハッパ好きの自由人ベン。その後、覚えのない体調不良に不安になるアリソン。実は一夜のラブアフェアのつもりが、妊娠していたのだった。彼女は二度と会うつもりのなかったベンに連絡をするのだが・・・
 結婚というのは、家族のみならず、友人関係も含めた相手の「世界観」を丸ごと受け入れるという点で、ただの恋愛関係よりもハードルが高い。文字通り「文化の衝突」が発生するわけで、そういう生々しさが見る前に想像していたよりもいっそうリアルだったという印象です。
 考えてみたら前監督作の『40歳の童貞男』もそうでしたが、コメディの要素だけでなく、感動(泣かせ)ポイントも演出過剰に陥ることがなく、そのさじ加減はいっそ禁欲的といってもいいくらい。独特のトーンが不思議と心に残ります。(だから個人的にはトゥーマッチ気味な『ミート・ザ・ペアレンツ』なんかはちょっと共感できないのだけど。)
 人生の一大事に直面した「未熟なパーソナリティ」の主人公が、彼(彼女)を教え導く「大人」のキャラクターの助言を糧に、映画の最後には成長を遂げる、というのが物語の定型ですが、(ここがまた『40歳の〜』と同様なのですが)意外とベンは見かけほど子供ではなくて、誰かに教えを請うでなく、内省から次のステップに進めるだけの成長の萌芽を最初から備えていた気がします。この辺りの人物造型がまた監督独特という印象なんですね。(だから個人的にはトゥーマッチ気味な『ミート・ザ・ペアレンツ』なんかはちょっと共感できないのだけど。)
 ところで、一番シンパシーを感じたお気に入りのキャラクターは、ポール・ラッド演じる義理の兄ピート。主人公たちを始めとして、周りの人たちからその時の気分次第で「あんた最高だな」と褒めちぎられたり、「根性なし」とボロカスに言われたり・・・その度に、ちょっと寂しそうに肩をすくめる仕種が何だかチャーミングでした。
☆☆☆1/2(結構4に近い)