真夜中の滑降(アーウィン・ショー)

 眼の病でパイロット稼業を辞め、将来の展望もなくやさぐれていた主人公と、戦争の経験から心の中の虚無を締め出すことができない中年ギャンブラーの友情。なんだかふた昔前の仏映画のような組み合わせが泣かせます。
 後半の道楽三昧の描写もリアリティがあってとても楽しかったのだけど、ショーの真骨頂は、むしろ前半部分の「零落したエスタブリッシュメント」を描き出す筆さばきにあるのではないかと思いました。どんな人の人生も傍から見るほど幸せじゃないんだよ、といった感じの。まあその原因は足ることを知らない人間の欲望の際限なさにある訳ですが。そういう両面をきちんとフォローしている立体的な人物造型がさすが。
☆☆☆☆