ある夜 A Noite(イヴァン・リンス)

ある夜
 タイトル曲は割りと最近何かのCMで使われてませんでしたか?
 ポップで伸びやかでありながら叙情的な側面もあり、かつフュージョンへの接近も感じさせるという一筋縄ではいかない多面性、そしてやっぱりどの曲にも通底するサウダージ。一小節に過剰に歌詞を畳み掛ける歌唱法(専門用語ではなんと言うんでしたっけ?)もあってポエトリー・リーディングのような趣もあり。バックグラウンドを知らないとさらっと聴いてしまうのですが、実は軍事政権に対するプロテストソングもあったり。(トロピカリズモに関して直接言及される人ではないようですが、やっぱり文化に携わる歌手としては物申さない訳にはいかなかったのかな。)
 さて最初にイヴァン・リンスを知ったのはアン・サリーの『velas』のカヴァーでした。先日亡くなったケニー・ランキンの曲もそうだったんだけど、アン・サリーはギターとヴォーカルというごくシンプルなスタイルなので、本家の方が遊びの多い編曲であることもあって、何だかカヴァーの主客関係が僕の中では転倒しているイメージなんですよね(もちろんどちらも素晴らしいんだけど)。ところで『velas』といえば、ライナーノーツを読んで気付いたのが、クインシー・ジョーンズが『愛のコリーダ』で取り上げていたんですね。インストだったから印象が薄かったのかしらん・・・ともあれこれは良いアルバムでした。もうちょっと他の作品も聴いてみようかな。
☆☆☆☆