1408号室(ミカエル・ハフストローム)

 S・キングの原作は、手練手管を尽くして読者をビビらせるということに徹した一点突破の短篇だったので、本来だったら40分強くらいのTVミニシリーズが相応しい尺だったのだと思う。(最近でいったらエミー賞をとった『バトルグラウンド』みたいに。) 長編映画とするからには当然それなりに膨らませる部分が要求される訳で、それが今作では主人公のヤサグレた元純文学作家で今はホラースポット評論家の「内面」でした。
 主人公は過去に父親との軋轢があって未だその傷を抱えており、なおかつ幼い娘を亡くしたことが原因で妻とは別居中。そんな彼が糊口をしのぐためと割り切って、いつもの気分で訪れたホテルの1408号室は「本物」だった・・・
 あらすじだけでもう結末が分かってしまうように、要はイニシエーションとしての場として「1408号室」が設定されているのですね。だから主人公は永遠の青二ジョン・キューザックというこれ以上ないくらいのタイプ・キャスト、しかしというか当然好演です。話としてはかなりの定番だし、実際その範疇から一歩もはみ出さないのだけど、身の丈をわきまえたような慎ましさがむしろ好印象。加えて、街を夜の帳が包む一瞬前の紫がかったスカイラインがビルの谷間にのぞいたり、という画面設計のディテールや、「カーペンターズの歌はじっくり聴くと何か怖い」という小ネタの使い方など、結構細部まで気配りが行き届いていました。
☆☆☆1/2