マルタの鷹(ジョン・ヒューストン)

 ちょっと前に読んだ『フリッカー、あるいは映画の魔』にこの作品への言及があったので鑑賞。ところが全然マルタ十字とか登場しないのな!まあ『フリッカー』は全編にわたって、というか全体が映画に関するペダンティックジョークみたいなものだったからなぁ・・・
 それはさておき、ハンフリー・ボガート出世作であるとか、ジョン・ヒューストンの初監督作であるとか、(もちろん)後続のハード・ボイルドのイメージを決定付けたものである、みたいな映画史に堂々たる一ページを記した作品(1941)でありまして。正直、観る前から既にして「観たかのようなイメージ」が自分の中に確立していた訳です。
 さて、「まるでわかってないな」との誹りを恐れずに書くと、これってどういう探偵コントですか?※といいたくなるような結構スットンキョウな展開ですよね。ちょっと予想とのギャップに戸惑って。名作という肩書きを脇に置いて虚心に観たら、ええっと・・・てならんかな?ところでミステリつながりで連想したのが、ほぼ同時期で(1942)これまた巨匠アンリ・ジョルジュ・クルーゾーの『犯人は21番に住む』。この作品も脱力展開というか微笑ましいところがあって、見た時はこれが時代性なのかなと思わぬでもなかったのですが。
 ただ、今確認したら、例えば『レベッカ』は1940制作なんですね。だからヒッチコック的洗練がある種定型になって久しい観客である我々からするとそうでもないのだけど(それでも相当面白いけど)、リアルタイムで観ていた人たちにとっては、ヒッチコック作品というのは大変なインパクトだったのだろうな、と思ったことでした。何だか全然遠いところに着地しましたが。
☆☆☆
 ※あえてコントと書いてみましたが、そういう「おもしろ要素」は演出に織り込み済みなんですけどね。