斬る(三隅研次)

 「お家のため、死んでもらいます」懐刀で女主人を暗殺する侍女。その必然の結果として彼女には処刑が待っていたが、斬首される直前、執行する侍と目を交わした彼女の唇には何故か微笑があった・・・
 冒頭から怒涛の展開ですが、とにかくグラフィカルでモダンなレイアウトが格好よい。後年の「子連れ狼」や「座頭市」のエログロ娯楽時代劇路線のイメージが強かったので、三隅監督はこういうスタイリッシュな映画も撮っていたのだな、と感心。
 していたのですが・・・中盤、あだ討ちの追っ手に追い詰められた若侍から姉を匿ってくれるよう託される主人公。ところが弟の危機を見かねて突然、着物を脱ぎ捨てる姉。「ま、待たれよ!何を?」と主人公ならずとも戸惑わずにはいられません。静止も聞かず多勢の追っ手に立ちふさがる姉、ドカーン、マッパに。やっぱり・・・。
 この「やっぱり」には「監督の趣味かぁ」という以外にもう一つ意味がありまして。実は主人公の運命を決定付ける三人の女性がいるのですが、母:藤村志保(凛々しい美人!)、妹:渚まゆみ(かわいらしい「妹キャラ」!)、成り行きで匿った娘(・・・)、率直にいってルックスのバランスが最後だけ悪い。何で?と思っていたら、「やっぱり」だったと。正直、物語上素っ裸になるのも唐突だし、これだったら「私、必然性があるなら・・・脱ぎます!」という女優さんも納得させられない気がするなあ。
 それはさて置き、剣によって結ばれた縁が、剣によって引き裂かれるというニヒリスティックな世界観を様式美で一気に見せきる演出(71分!)が素晴らしい。クライマックス、主の大炊頭を探してひと気のなくなった屋敷を彷徨う主人公。迷宮のような広がりを感じさせる美術とカメラがよい仕事です。『斬る』を雷蔵ベストに挙げる人がいるというのも納得。実人生と単純に結び付けてしまうのはよくないと思いつつ、やっぱり市川雷蔵には悲劇的な物語が良く似合う気がします。
☆☆☆☆

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