ムッシュ・マロセーヌ(ダニエル・ペナック)

 ベルヴィル4部作完結編。つい昨年ようやく出版されていたことに気付いて。どこまでもとっ散らかって拡散していくエピソードを回収していく手つきの鮮やかさは相変わらず素晴らしいのだけど、今回は犯人の設定にいささか無理があったような、というか、ミスリードのむちゃ振りが・・・。それでも外伝の翻訳も期待しているのですが。読後の印象を振り返ると4作の中では『カービン銃の妖精』が一番面白かったような気がします。
 ところで物語中、アゴタ・クリストフの『悪童日記』三部作的なメタな叙述に転びそうな展開があってヒヤヒヤしたのですが(完結編だし)、辛うじて踏みとどまってくれたので一安心。一時期非常に流行っていたけれど、個人的には余程の必然性がないとああいうのは萎えるんだ。
☆☆☆1/2