幸福な食卓(小松隆志)

 こんな爽やかな作品だったとは。キットカットとのタイアップなんかもあって(その割りにあまり話題になってなかったけれど)何となく敬遠してたんだけど、もったいないことをした。
 全編通して過剰さを戒めるような落ち着いたトーン。例えば終盤の手紙が届くシーンなんかはへたな監督だともう一押ししてやろうと色気を出してしまうところだけど、泣かせにかからないのがいい。また「家族崩壊もの」の物語なので「シュールなアート系作品」としてある種逃げの演出(奇矯なキャラクターを強調するとか)も方法論としてあったかと思いますが、どこまでも地に足の着いたストーリーテリングでそちらに行かなかったのも潔い。抑制の美学。
 朴訥とした北乃きいの演技がよくそれに応えていました。勝地涼が活発で真っ直ぐな男の子役でこれまた良かった。こういう芝居もできるんですね。正直すこし侮ってたな。
 しかし彼ら以上に意外かつ好演だったのがさくら。一本調子にならない多面的なキャラクターをよく演じていてちょっとびっくりした。結構ポテンシャルがありますね。主役を狙わなくてもバイプレーヤーとして伸びてほしいです。
☆☆☆☆