真夜中に捨てられる靴(デイヴィッド・マレル)

 ランボーこと『一人だけの軍隊』で知られるマレルのホラー・SFの短編集。いまアマゾンを見たら、ランボーの2,3作目のノヴェライズも手掛けてたんですね。「最後の戦場」をどう観たか気になるな・・・
 ところで、「自らの体験を掘り下げて作品を作るタイプ」と「ゼロから作品世界を創りあげるタイプ」に作家は大別される、という言い方があります。大雑把にいって、ジャンル小説の作家は後者がほとんどだろうと思っていたのだけど、この短編集を読んでちょっと認識を改めました。
 「娘を殺した連続殺人犯を追う父」「エルビスにのめり込む大学教授」「難病の父を救うため奔走する息子」といった動機は様々あれど、何かに取り付かれたことで平穏な日々を踏み外していく人々を主人公にした作品。この「妄執」というテーマは結果的にそうなっただけで、それを目的にして編まれた訳ではないというのが作者の弁。そこに大きな影を落としているのは幼い息子を亡くしたこと、そしてもう一つが、幸福とはいえなかった母にまつわる想い出。この回想が描かれる「作者あとがき」が最大の読みどころだったような。
☆☆☆