夏の涯ての島(イアン・R・マクラウド)

 藤子・F・不二雄のSF短篇ものは、年齢を重ねるにつれ、受け入れなければならない「あきらめ」みたいな諦念が裏テーマにあるものが意外と多く、藤子Ⓐのような一読したときのインパクト勝負でない分、後からボディブローのように効いてくることに大人になって気付いた。小学生の頃読んでピンとこなかった『宇宙人』もそんな一編。宇宙人マニアの福島は、念願かなって外宇宙探索隊のメンバーになった。彼はある惑星で石器と火の痕跡を発見するのだが・・・という話。
 今回マクラウドの短編集を読んで藤子作品を思い出したのは、直接的にはSETI(地球外知的生命体探査)に生涯を懸ける男の苦いラブストーリー「ドレイクの方程式に新しい光を」がその「宇宙人」と少しテーマがかぶってたから。ただノスタルジアとセンチメンタリズムという部分でトーンに通底するものがあるし、なにより扱うSFアイディアそのものよりもそういったテーマに重きを置いているところが共通していると思う。つまりS・F(すこし不思議)な短編集でした。
☆☆☆1/2