いのちのパレード(恩田陸)

 「異色作家短篇集」カヴァーアルバム的なコンセプトのもと書かれた短編集。なので恩田初心者(私)向けショーケースとしてはもってこいなのかも。ただ、きっちりお話としてまとめる手腕と作品ごとの振幅の広さには感心させられるものの、ウェルメイドであることの反面としてパンチ不足は否めない。
 というよりも、2番目に配置されている「スペインの苔」の荒涼とした世界観にショックを受けて、こんな黒々した話も書く作家だったのかと的外れな期待をしたせいで、方向性の違いに肩透かしを感じたのかも。とにかく僕にとっては「スペインの苔」に尽きる短編集だった。それと表紙のJosef Koudelkaの写真、ベストチョイスです。

☆☆☆1/2