ダークナイト(クリストファー・ノーラン)

 『香港国際警察NEW POLICE STORY』のリメイクかと思ったよ・・・ 。良かったところはいろんな所で書かれているから、以下気になった点を幾つか。
 ・おそらく最大の見所である「ヒース・レジャーの文字通り命を削った鬼気迫る演技」は、曲者役者として一番弾けていた頃のゲイリー・オールドマン的であるなあと思われたくらいで。この作品中ではゲイリー自身が引きの演技をしていることとの比較もあって、ちょっと残念でした。「狂気の演技」ってどうしてもああいう型に行き着くのかな。
 ・演出について。ジョーカーが純粋悪であることを強調するように、手に入れた大量の札束をあえて燃やしてみせたり、(市井の人々がある決断に際して投票を行うことで)「自身の手を汚さない武力行使にはイエスだけど、自らの問題となればノーである」という人間の卑小さを描いてみせたり※といったように、(描こうとしていることに共感はできるのだけれど)絵解き的な部分が前面に出すぎるきらいがある。監督の生真面目さゆえなんだろうと思うけど・・・
 ・バットマンの香港出張は、何だか『ジェイソンN.Y.へ』みたい。クリスタル・レイク限定は不文律じゃなかったのかよ、という。
 ・スケアクロウはあの程度の登場なのに、ちゃんとキリアン・マーフィだった。律儀な人だ。
☆☆☆1/2
 ※究極的には性善説を語るシーンですが、それだけだとしたら事前の投票は必要ないので。「10分前にすべきだった決断を俺がしてやる」というセリフはとても格好良かったのだけど。