パンズ・ラビリンス(ギレルモ・デル・トロ)

 ギレルモ監督のフィルモグラフィーは、テーマ性(あるいは監督の趣味性)が強い作品と完全に娯楽を志向している作品に大別できると思います。(ex.前者『クロノス』『デビルズ・バックボーン』、後者『ブレイド2』『ヘルボーイ』)今作を伝え聞くところでは、両者の方向性がバランスしたものなのかなという印象だったのですが・・・
 ところで、この監督の作品は自分好みの要素ばかりで構成されているのに、いつも見た後に何故か一抹の物足りなさを実は感じていて、この作品では前述の二つの方向性が補い合うことで、監督としての次のレベルに踏み出しているのではないかと期待していた訳です。
 ところが、「略奪するのに貯蔵庫を破壊せず合鍵で開ける」(対案としては、物資が少しずつ盗まれていることで疑惑が生じる等にすべきでは?)「殺すチャンスと時間がありながら、止めを刺さない」「扉を開くチョークを紛失(わざわざ置いてるように見える)」といった、物語都合上発生するアクシデント(主にゲリラ側の杜撰さ)というそれ以前の問題のせいで素直に物語にのめり込めませんでした。「そうしないと話が展開しないじゃない」と思える人なら気にも留めないことだとは我ながら思ったのだけど、「そこを上手いこと工夫するのが脚本家(監督自身なんだけど)の腕の見せ所ではないのか?」という気持ちも拭いがたくあって・・・
 「オフェリア」という名前からして(イメージも引用されてましたけど)悲劇性をまとった主人公ですが、あの哀しくも力強い結末。上記のあれこれもどうでもよくなりました(泣けた)。映画って全編でのバランスじゃなくて、そういうシーンひとつで印象が引っくり返るから面白いですね。
☆☆☆☆