ゴーレム100(アルフレッド・ベスター)

 途中、エンターテインメントの手練手管で盛り上げておいて、結末で哲学的な問いかけをお客さんに放り投げたまま「・・・ンン?」ってなっちゃう作品をエヴァ的とするならば、これはまたものすごくエヴァ的作品だったなあと。(もうそういう言い回し、僕自身もいいかげんアレなんですが、今なら2周目くらいで許されないだろうか。)ついでに言うとこれほど「セカイ系」な話もない訳で。ちょっと前に喧伝された「セカイ系」というのは、実はわりと古典的な構造なのかもと最近は考えてます。それともビジュアル面との結びつきありきのムーブメントだったのかしらん。
 ところで本編ですが、露悪的でパワフルかつアイディア過剰なところはいつものベスター節。だから中盤までは楽しく読んでいたのだけれど・・・結末を想定した上で書き進めたとは思われない弾けぶり。主人公クラスの登場人物の言動までもが「ときどき」常軌を逸している(常に、なら逆にまだ理解できるんだけど。まさしく晴れ、ときどきキルミーですよ)。クスリでもキメながら書いていたとしか思えないのですが、そこがバロウズのパロディなのかなぁ。
 ところで「多様なレベルの読みが可能」みたいなスリップストリーム系SFの評価って、一種のエクスキューズじゃないかと最近思う。それとも国書刊行会に普通の娯楽作を求めたのが間違ってたか・・・好事家にはこういうのが堪えられないのかな?
☆☆☆
※ネット感想周遊してると、絶賛の嵐ですね。かなり意外。でもそういう感想の人は何故か『虎』がダメらしくて・・・好みの問題なのかな。