パラレル(長嶋有)

 登場人物に共感できるか否かで小説の評価を決めるのは狭量だと思う。けれど、主人公たちの中途半端な鬼畜ぶりがリアルで(身の回りにもまあ・・・いるよなあ、こういう人種)不快だった。離婚の端境期にズルズルと甘えてみせる主人公の元妻もやけに生々しくて。
 という感想の人間は自分だけじゃあるまいと思ってたら、少なくともネット上では結構良い感じに受け止められているようで(しかも女性が!)、「性欲用」という思考も受容するってことなんだろうか。それとも無意識に「まあ自分は違うし」と思ってるのか・・・知らんけれど。
 ただやっぱり思うのは、最後のシーンをキメに行くのが上手い。何冊か長嶋作品を読んだけれど、その点は本当に巧みだ。キメすぎな感じがちょっとやらしいという批判も時々目にするけれど、「終わりよければ全てよし」というのは、小説や映画みたいに「ある時間枠の中で何かを語りきる」という表現形式の作品では真理だと思う。
 というところで、「しみじみいい感じ」という感想の人はちょっと誤魔化されてるんじゃないだろうか。何というか、散々味方を殺されたのに、バトルを通じて分かり合えた強敵(とも)とは何もなかったかのように仲間になる、という「少年ジャンプ展開」と同じような腑に落ちなさを感じるなあ。
☆☆☆1/2(でも上手い度)