ロード・オブ・イリュージョン(クライヴ・バーカー)

 「本物の魔術師」ニックス率いるカルト教団と決別するため彼を殺し、今ではイリュージョニストとしての名声を欲しいままにしているスワン。しかしある奇術の実演の際、誤って自らを殺してしまう。事故ではないはずと疑い、オカルト専門の私立探偵ハリーに捜査を依頼する未亡人ドロシア。果たしてそれは13年目に蘇ったニックスの仕業なのか・・・
 スプラッタ・パンクの旗手として鳴らしたバーカーですが、(何度も書いてるけど)やっぱり生真面目すぎるんだと思う。自分の欲求のままに映画を撮ると変態性がこぼれ出てしまうクローネンバーグや、米現代アートシーンのマーケティングから逆算された悪趣味を盛り込むことで成功したリンチと比較すると。
 クライマックス、復活したニックスが、「お前と俺の関係に入り込んできたあの小娘が悪いんだ!!」「ついでにいうと、俺は真理の伝道じゃなくて、この世に破滅をもたらすために使わされたんだ!!」ってどさくさにまぎれて何を言い出すんだこのオヤジは・・・と観客を置き去りにしてゲイの痴情のもつれのあげくの逆ギレトークを展開してくれます。なんというか、監督自身の何かが投影されていたように思われてならない(バーカーはカミングアウトしてます)。
 それにしても、個人と個人のごくパーソナルな関係性が、そのまま世界の破滅という大きな話に直結しているという構造にはどうしても「セカイ系」が連想されてしまう。そういう視点で顧みると、「セカイ系」的な思春期をこじらせちゃった感じというのは、ここ最近の日本に限ったことではないのかもしれないですね。
☆☆1/2