トマス・モアの大冒険―パスト・マスター(R・A・ラファティ)

 そういえば『人類補完機構』と並んでエヴァンゲリオンの元ネタって言われてなかったっけ・・・
 実際読んでみてさもありなんという感じだった。ラファティではおなじみの所謂「秘密結社」ネタ。ただコードウェイナー・スミスほど視線が冷徹ではない。
 もうちょっと具体的に書くと、国家の政策的大きな目的を達成するためには犠牲者が出るのは当然とばかりに、人がバタバタ死んでいく話という点では共通しているのだけれど(考えてみたらトム・クランシーのジャック・ライアンものにも同じ匂いがするね・・・)、それを「必要損耗」的に数量としてとらえている怖さが「補完機構シリーズ」にはある(もっというとエヴァショック後のSF的世界観をもったアニメ・漫画はそういった冷徹さをクールさと履き違えていると思う。何度も書いてるけど)。それに対して、この作品はそういう「大義」にいつのまにか無感覚・無批判になってしまうことへの反対表明になっている。まあ、実際のテイストはいつものラファティ節で、悪役の理屈のエスカレートぶりが極端で笑ってしまう。
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