狼の一族(V.A)若島正:編

 異色作家短編集の最後を飾るアンソロジー3冊中の2冊目までを読んだわけですが、うーん今回のアメリカ篇は「こういう機会でないと読めないレア作家」が比較的乏しく、かつ「埋もれていた名作感」もあまりなかったので(まあ未訳作品でのアンソロジー、という若島さんが自らに課した「しばり」のハードルが高いということもあると思うけれど)やや物足りなかったのが正直な感想です。
 あえて挙げるならジャック・リッチーの『貯金箱の殺人』でしょうか。ブラックな展開と見せかけて、もう一ひねりあるところが高ポイント。それだけならよくあるプロットかもしれないけれど、語り口がどこまでも牧歌的なので、最終的にどういう落としどころに持っていくつもりなのか最後まで予測がつかない。そこ(題材と語りのギャップ)はおそらく意図せざる効果だったのでは?というところで、もうちょっとほかの作品も読んでみたいと思いました。
 S・キングを思わせるジーン・シェパード『スカット・ファーカスと魔性のマライア』のノスタルジアもなかなかの味わいだったかな。
☆☆☆1/2