ハウルの動く城(宮崎駿)

 いやー面白かった。せっかくなら映画館で見たかったなあ、と例によって後悔したのだが、実際のところなんで映画館に足を運ばなかったのか思い返してみると・・・
 現実にどの程度存在していたのか分からないけれど「脱サラ」で「ヒゲ」の「白いギターで1曲歌っちゃう」ような「ペンション・オーナー」というのがカリカチュア化されたステレオタイプとして語られることがかつてあった。(今はそういう風に語られることそのものが絶滅に近いけど。)あれっていうのは、多分(脱サラしてしまうほど)自立心旺盛な団塊の世代の暑苦しさを揶揄するというニュアンスがあったのだ、と今にして思うのだが、予告編で流れていた「恋人は、弱虫の魔法使い」とか「このばあさんが、かなり元気!」みたいなキャッチにそれに似た種類の「押し付けがましさ」を感じて(しかもあの字体!)萎えてしまったのだった。ということを思い出した。参照トレーラー 
 ハウル関連の書籍を読むと、あのコピーは名物プロデューサーの鈴木敏夫によるもので、文字も彼の手書きだという。さもありなん・・・。いやハウルの声をキムタクが演じる、といった手法は「絶対当てる」ことが至上命題の作品においては正解だと思うのでむしろ気にならなかったのだが、『イノセンス』にせよプロデューサーが前面に出すぎ、というか出ても平気というメンタリティにかなり抵抗を感じる。ただ幸いにして今回『ゲド戦記』に関してはそうでもないみたいね、とうっかり気を抜くとタイトルが鈴木フォント!えぇ・・・まあ個人的にはそれくらい破壊力のある字体なのである、ということです。

 作品としては、「無理くりなハッピー・エンド」や、「整合性無視の投げっぱなしなストーリー」といった公開時批判が集中していた要素については、結果オーライでほとんど気にならなかった。なにより説教臭くないのがいい。ハウルの声の件も「外見上の完璧性」を担保するという意味でこれ以上ないくらいベストキャストだったし、実際に観た人の間では概ね好評だったと記憶している。
 これだけよく動いて、楽しませてくれる映画ってそんなにないと思います。
☆☆☆☆☆