PTU(ジョニー・トゥ)

 縁、というより因果に導かれて、出会ってはいけない人々が香港の一角に集うというストーリーが、先日『ワンナイト・イン・モンコック』を観た際に連想されたので。

 銃を失くした刑事、彼に協力する機動隊(PTU)、ボス同士の抗争、それを追う捜査班、互いに複雑に絡まりあった関係はいつしか彼らを香港の片隅に引き寄せる・・・

 ジョニー・トゥ監督作品は各方面からの評価が高かった『ザ・ミッション』が記憶に新しいところ。実は僕は過剰な暴力描写が苦手で、その点がネックになって作品に没入できなかったのだけど(といいながら暗黒三部作は全部観てるんだけど、やっぱり苦手だ・・・)、今回はギリギリ許容範囲だったのか素直に物語世界に酔えた。

 監督作品でまず語られるのは、作品を貫く美学とでもいうべきストイックさとそれを裏打ちする映像のスタイリッシュさ。矛盾する要素のような気もするが、ここでいうスタイリッシュさというのはデ・パルマ作品のようなトリッキーなカメラではなくて、決めるべき箇所でバッチリ決めに行く構図の美しさみたいなもの。
 例えば、PTUのメンバーが突入するときのフォーメーション(攻撃班と援護班)を押さえた画などは鳥肌が立つような格好良さ。あるいは深夜に徘徊する、自転車に乗った謎のガキ。正に「魔都」を思わせるシュールな画。(これが只の雰囲気づくりだけではなくて、後でちゃんとオチがつくのも上手かった。)これらが蛍光灯の緑がかった光のカメラで撮られるとえもいわれぬ美しさがあるのです。ちょっとクリストファー・ドイル風だけど。

 でもストイックさみたいなのが前面に出てきたのは、実際は『ザ・ミッション』からで、監督本来の持ち味は『ワンダー・ガールズ』の頃から、いかにも香港映画らしいダイナミックなやり散らかし放題ぶりだったと思う。(そういった要素は『ヒーロー・ネバー・ダイ』のクライマックスのエクストリームな銃撃戦と通底している。)
 要は観客を楽しませるためには何でもやるというというサービス過剰ぶりと職人気質。だから類縁を求めるなら三池監督が一番近い気がするのです。題材を選ばないところも含めて。(エロを周到に避けてるのが最大の違いだけれども。)

 えー周辺をぐるぐる語って、全く作品に触れてませんが、格好悪い格好よさみたいな話をご所望なら是非。深夜食堂の画は最高です。
☆☆☆1/2