ナポレオン・ダイナマイト<邦題:『バス男』>(ジャレッド・ヘス)

 とにかく、「すごい悪人」とか「すごい善人」とか「素晴らしい美人」みたいに、飛びぬけた属性を備えた登場人物がひとりも出てこないのがすごい。主人公ですら奇矯なキャラではあるものの、学年に一人や二人はいたようなリアルな変人ぶり。要は「映画サイズ」のキャラクターがいないにも関わらず、見事に「映画」であるというすごさ。なおかつ全米スマッシュヒットという実績が輪をかけて素晴らしい。それをFOXが配給しているという所に米国映画の底力を感じる。

 と、ひとしきり褒めてみたけれども、実はオモシロさが今ひとつ分からなかったのです。『天才マックスの世界』のことがピンとこなかった、あの感じに似てる。(『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』はオールタイムベスト10に入るぐらい好きなのに。)①奇矯なキャラが主人公、②学園ものという共通点がある両者、それに加えて、監督に並々ならぬこだわりが感じられるという点も似ている。なんかあるんだろうな、とは思うんだけど。

 特筆すべきは音楽のセンス。チープな電子オルガンサウンドなのにやけに耳に残る。それに(ウェス・アンダーソンほどこれ見よがしではないが)画の切り取り方も気持ちがいい。ともあれ次回作に期待かな。

☆☆☆