ミュンヘン(スティーブン・スピルバーグ)

 重いテーマをさらっと映画にしている。スピルバーグ作品の系譜からいくと「太陽の帝国」、「シンドラーのリスト」に連なるようなものだという思い込みで観に行ってみたら、実際のテイストは「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」に不思議とよく似ていた。

 正直いうと、最後あたりはちょっとダレる。2時間44分の長尺は報復の虚しさ、徒労感を観客に共有させるという狙いだったのだろうか。でも(とりわけ)「オランダからの暗殺者」のくだりはまるまるカットしてもよかったのではなかろうか?ただ「プライベート・ライアン」に感じられた戦勝国の傲慢さみたいなものは後退し、語り口は割りと公平だったとは評価できると思う。

 キャストが充実。特にフランスからの参戦組、二人のマチューがいい味。「玩具屋」役のカソヴィッツは「アメリ」とはまた違った印象で。もうみんな忘れたと思しき「バースデイ・ガール」の時も良かったけれど。監督業よりいい仕事してますね。 
 一方、アマルリックの方は「謎の情報屋」ルイ役を得体の知れない雰囲気を活かして好演。「そして僕は恋をする」の時は胃にもたれそうな恋愛のゴタゴタ話が風貌で2割り増しだったけど、今回はよいはまり具合。そんな彼の印象深かったシーン:ランデブー・ポイントであるキッチンのショールームを見つめる主人公(料理好き)に対して、イスラエルの建国由来にかけて「家(ホーム)は高くつくんだよ」と声をかけ、今、俺うまいこと言った!と「してやったり」の顔をするところ。

 残念ながら言われているほど感心はしませんでした。けれども、主人公達の70年代ファッションが何故?と問いたくなるほどオシャレだったのは眼福でした。
☆☆☆1/2