Mr.インクレディブル(ブラッド・バード)

アイアン・ジャイアントで観客の涙を搾り取ったバード監督と、子供のみならず大人の鑑賞に堪えるクオリティの物語づくりで定評のあるピクサーが組む!という夢のようなプロジェクト。心待ちにしていたこの作品をようやく観たのですが・・・
素晴らしいのひとこと。すべての要素が完璧。モンスターズ・インクやニモではその完成度にも関わらず見終わったあとにそれなりに難点を指摘できたけど、今回は見当たらない。

まず動きの快感に忠実なアクションが素晴らしい。アニメを見ることの原初的な喜びを思い出させてくれるような作品です。米アニメのお家芸というか、日本が商業アニメの旗手となった今でも追いつけないのは、トム&ジェリーのような空間を縦横に活用した活劇の組み立てだろう。これはもう民族性といったレベルで根本的に発想が違うのではないかとしか思えない。<直接的に一番ジャンルが近いのはクレしん映画版だと思うけれど(テーマも近い)、アクションシークエンスに限っていえばまだまだ追いついてない。(もちろん作品そのものの完成度とは別の話。)>

細かいところへのこだわりが感じられるのがまた嬉しい。ジャンル的なお約束、ツボを突く演出(例えばアルバイトのベビーシッターには歯に矯正器具とか)。そうそうこれが観たかったんだよ!と思わず膝を打つ展開。本当に叩いてたら観終わったあとに腫れ上がったんじゃなかろうか。というほど。

まあ一般的にはフックになるキャラクターは赤ん坊のジャック・ジャックなんだろうけども、実際に観たら元イラスティガールこと奥さんのヘレンにやられた。家庭の危機に悪人退治に縦横無尽の大活躍。この映画の実質的な主人公はヘレンじゃないかなあ。