ニューオーリンズ・トライアル(ゲイリー・フレダー)

監督は「コレクター」(モーフリの方)、「デンバーに死す時」「クローン」というフィルモグラフィが示すように今ひとつピリッとしないサスペンスを撮る職人監督というイメージ。しかも何となくゲイリー・グレイ(「交渉人」「ミニミニ大作戦(新)」)、グレイつながりで何となくジェームズ・グレイ(「リトル・オデッサ」「裏切り者」)ともごっちゃになってしまうという3すくみ。別にすくんでないか。かように僕の中では割りとどうでもいいポジションの人であったのだが、その監督が何とジーン・ハックマンダスティン・ホフマンという大物2人を相手に作品を作ったという。それに絡むのがジョン・キューザックレイチェル・ワイズという若手実力派。公開時には役者のためだけでもこれは観ねば!と思っていたのだが、時期を逸してしまい漸くDVD鑑賞となった次第。

まあ結論から言うと、「よくがんばりました」というところか。すごく楽しめたのは間違いないからよかったのだけど、いつものグリシャム原作映画どおり、まとめ方が力技で何となくオチがついた印象で(決め方は王道のハリウッドエンディングで爽快ではあるんだけど)、鑑賞前に想像していた緻密な法廷劇からは程遠かった。

ただこれは原作のおかげであるが、陪審員コンサルタントという仕事をネタにする着眼点は素晴らしいと思う。原作未読なのだが、なんでも原作では劇の進行上キューザックとワイズの関係が明らかにされるまでがもうちょっと長くて、コンゲームの要素の分量が多いのだとか。まあ原作に忠実すぎると視点が拡散してしまった気もするのでこれはアダプテーションとしては正解だったようだ。ただそこまでするなら、明らかに映画上は捨てキャラの原告側見習いコンサルタントの役も切ってよかった。

さてお目当ての2大俳優の激突だが、割りとあっさりで(原作にもない形での(とのこと)正面きってのやりとりはちゃんとあるけれども)、全体としてはダスティン・ホフマンが一歩引いている印象を受けた。しかしそういった大人なスタンスがむしろ好ましく思われて、タイプキャストとしてのオファーではあろうが、両人ともさすがに見せる演技であった。