ロボットの時代(アイザック・アシモフ)

久しぶりに短篇の醍醐味を堪能した。

つまるところアシモフのロボットもの短篇は、「ロボット3原則」というしばりを設けた上で、それが破られた(かに見える)状況がいかにして現出したのかという謎を、スーザン・キャルヴィンという探偵が論理的に解決する、というホワイダニットのミステリである。実際アシモフは「黒後家蜘蛛の会シリーズ」という純然たるミステリも書いているわけだが。(本作収録の「みんな集まれ」と似たアイディアの作品もあったな。「みんな〜」の方はもう一捻りあるんだけど。)

ただやはりSF設定での方が筆は冴えるようで。この短編集の収録作では「お気に召すことうけあい」や「危険」にみられるストーリーテリングが飛びぬけて素晴らしい。オチの決め方と相まって、大きなカタルシスがある。正に読書の楽しみとはこれだ、というような。最近の短篇小説によくあるような、中途半端に「開かれた」結末ばかり読んでいると、こういうカッチリした作品が恋しくなる。

ところで、トリビアの泉のオープニングからアシモフの言葉がなくなって寂しい、という意見もあるようだが、名言というにはあまりキレがない言葉だったから、むしろなくなってすっきりしたと個人的には思う。