五月三十五日(エーリッヒ・ケストナー)

少年と叔父と人間の言葉をしゃべるローラースケートを履いた馬の3人組が、「なまけものの国」「電気仕掛けの都市」「さかさの国」など風変わりな国を経由して、南洋めざして冒険旅行を繰り広げる。

あらすじを読むと、ガリバー旅行記のような物語の形式、またケストナーの作風からしても、現代社会を風刺する物語なんだろうなと想像されるが、実際読んでみるとあまりそういう印象はなく、むしろ「ためにするナンセンス」を貫いている。(もちろん多少はそういう要素はあるが。)

点子ちゃんとアントン」「飛ぶ教室」など、ケストナーの他の作品では啓蒙するような説教節が定番で、個人的にはそういうところが逆に楽しみで読んでいるのだが、今作は驚くほど普通のホラ話。少年とおじさんのやりとりが微笑ましい。現代の作家ではダニエル・ペナックのキャラクターたちに通底するものを感じる。

タイトルどおりの純粋なナンセンス童話として楽しめました。