パンチドランク・ラブ(ポール・トーマス・アンダーソン)

 今回はついていけなかった。
 PTAの映画は、(タランティーノになぞらえていえば「パルプ・フィクション」より「レザボア・ドッグス」が好きなように)彼のフィルモグラフィ上では「パルプ〜」的ポジションにあたる「マグノリア」よりは、ソリッドな構成だった「ハード・エイト」の方が(また「ブギーナイツ」よりも)好みである。

 この作品の構成自体はエピソードが輻輳することもなくストレートな語りであり、無理すれば男版アメリといえなくもなさそうである。(どこかでそういう表現を目にしたような気もする。)ただキャラクターがあまりにも奇矯で、だれにもシンパシーを感じられない。「アメリ」では微笑ましく見ていられたキャラクターの壊れ方がある一線を越えてしまっている。シンプルなラブストーリーなだけに、これは致命的である。だから逆に「これもあり」と思える観客にとっては楽しめる作品かもしれない。

 ところであえてヒロインにエミリー・ワトソンを持ってきたのは「あて書き」だったというA・サンドラーのキャスティング同様に狙いだったのだろうけれど、アメリ=エミリーの意であったという「アメリ」の主人公は彼女が降りてくれて本当によかったと思ったことであった。(リベリオンの時は雰囲気に合っていてよかったんだけどね。)

 しかしあんな強烈な姉の元(しかも7人!)で育ったら歪むよなあ。

☆☆