恋は邪魔者(ペイトン・リード)

人工美の極致。映画とは総合芸術だなあ、と改めて。

時は1962年、まだベトナム戦争の影がささない時代。メイン州からやってきた新進女性作家バーバラは期待を胸にNYにやってきた。彼女の著作は「恋は邪魔者」という女性の自立を啓蒙する進歩的な内容。プロモーション活動の一環として「イフ」という有名雑誌の取材を受けることになった。ところが相手は敏腕だがプレイボーイとしても有名なキャッチャーという男。結局、彼のあまりにもいい加減な態度に業を煮やしたバーバラは他の方法を選択。結果は大ヒット。世の女性はみな自立を口にするようになり、遊びだけの男は用済みになる。
自分が原因とはいえ、プレイボーイ稼業を廃業にされてしまったキャッチャーは腹いせに別人になりすまし、バーバラの本音はその作品とは違うことを暴く作戦を考える。果たしてその結果は?

子供のころ土日の昼にやっていた記憶がある古きよきロマンチック・コメディの再生。音楽、美術(調度)、服装全てが60年代風を徹底している。というよりも、捏造するくらいの勢いがある。例えばバーバラが宿泊している高級ホテルの高層階から見える景色は、あえて手書きのスカイスクレーパーだったり。これみよがしのスプリットスクリーンなんかも昔風。
恋の鞘当を演じる主人公2人(レニー・ゼルヴィガーとユアン・マクレガー)は、今回演じる役からするとちょっと「ロマンティック度」が足りない田舎臭い印象があったのだが、想像以上に大丈夫だった。特にマクレガーのプレイボーイ振りはなかなか板についていて感心した。あるいは逆にこの2人だったからこそ全体のトーンが弾けすぎずに調和されていたのかもしれない。エンドロールのデュエットとダンスは最高。

さて内容構成であるが、最後のちょっとしたどんでん返しも含め、尺も必要以上に長くなくコンパクトにまとまっていて非常によかったと思う。最近のやたら長くて緊張感に乏しい2時間オーバーの作品には見習っていただきたい。ただすこし残念だったのは、そのどんでん返しのあとの物語進行の処理を誤ってしまっていたこと。脚本自体ではよい分量だったのかもしれないが、観客の体感時間としてはもたついている印象であった。加えて(見た人ならわかるとおもうが)そのどんでん返し以降のキャッチャー側の心理の変化というか経過が、こちらに十分伝わってくるだけの描写がなかっただけに唐突に思えること。(最後の瞬間まで「してやったり」って顔だったような・・)
ところでゼルヴィガーにはすごい長台詞があるのだけど、変に頑張って演技派を気取らずにキープ自然体の方がいいと思います。別に好きではないんだけど少し心配になりました。まあ元々「演技としての自然体」の匂いがする人ではあったが。