犯罪都市 THE ROUNDUP(イ・サンヨン)

常軌を逸した犯罪者を常識外れの刑事が叩きのめす、というシンプルな話。ストレートな捕物帳で娯楽作品としては十分満足でした。しかしながら、1作目の組織同士の抗争と市井の人々のようなレイヤーの異なる人間ドラマの妙味には乏しくて、すこし残念だった…

神々の歩法(宮澤伊織)

端的に言えばウルトラマンのバリアントですが、ミリタリーSFと融合することで意外な面白みを獲得しています。宇宙の超次元から襲来した知性体同士の戦いのため、現実世界に物理的な力を行使するには次元を超えた舞踏を展開する必要がある、という設定が美し…

スパイ・ゲーム(トニー・スコット)

最近の若い人にはもはやピンとこないかもしれませんが、『リバー・ランズ・スルー・イット』あたりからロバート・レッドフォードの再来と呼ばれるに至ったブラッド・ピットが、いよいよ満を持して「ご本人登場!」となった、という出オチ企画感が当時ありま…

すばらしき映画音楽たち(マット・シュレイダー)

映画の草創期から現代に至るまで、映画音楽がいかにして発展を遂げてきたかをコンパクトに過不足なくまとめていて素晴らしかったです。 個人的には、パソコン上で作成された楽曲をオーケストラ用の譜面に起こすオーケストレーターを始めとして、必要な見出し…

コンフィデンシャル/共助(キム・ソンフン)

北と南の国境を越えた相棒ものは『義兄弟』しかり、傑作が多いですね。主人公のひとりはヒョンビンだったんだけど、この人が話題になっていた「愛の不時着」の役者さんだったんですね。同じく北朝鮮の実直な軍人という役どころで、キャスティングにはこの映…

ゴジラVSコング(アダム・ウィンガード)

(ネタバレかも)低予算のアイディア勝負だからこそ輝く監督たちがいて、アダム・ウィンガードもその一人だったんだな…とちょっと寂しい気持ちになりました。 いくらなんでもちょっと場当たり的な展開すぎる。 ・小栗旬、何しに出てきたの? ・今、仲間が死…

刺青一代(鈴木清順)

クライマックスの殴り込みシーンだけがケレンの効いた監督らしいアクションだったけど、それ以外は普通というか…物語の都合なんだけど、すべての原因になっている弟の愚かさが突出していてちょっとついていけませんでした。 ☆☆1/2

オーメン(ジョン・ムーア)

そういえばリメイクあったね、という遠い記憶でしたが初めて見ました。2000年代特有のクリアで平板なルックで、やっぱりオカルトだったりホラーだったりが70年代に流行ったのは、(ニューシネマあたりからの)粒子も荒々しいフィルムだったからこその見た目…

東京流れ者(鈴木清順)

ありえないロケーション(というかセット)、ビビッドな色使いなど、タランティーノやレフンが傾倒しているのもよく分かる。任侠のよく分からない人間関係はなるほどジョン・ウーだなとか。格好いい画が撮れたら話はどうでもいいと割り切っているのがよく分…

いずれすべては海の中に(サラ・ピンスカー)

同性愛も異性愛もことさらにそのこと自体がテーマとして前景化することなく、(老若男女のような)ただの属性として軽やかに並置されているのが新しいなと思いました。小説ってだんだんこういう感じになっていくのかな、という過渡期を感じます。 スモールビ…

名もなき野良犬の輪舞(ビョン・ソンヒョン)

いやー最高でした。潜入捜査ものなんだけど、「潜入」と知られるのが中盤というように展開が変則的なのが試みとして新鮮だったし、抜き差しならぬ状況(見ている方がどうにも仕方ないと納得するような)を生み出すための脚本が良く練られていて、かつ、演出…

フェイブルマンズ(スティーブン・スピルバーグ)

もっと映画に対する憧憬だったり映画の腕前を磨いたりする場面が多いのかと思ったら、こんなつらい少年時代を送りましたという話が専らだったのでこちらもつらかったです。(まあ一度どこかで吐き出したかったのかもしれない。) 何というか、スピルバーグは…

恐ろしく奇妙な夜(ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ)

ミステリとしての強度はそこそこなのだけど、物語のディテールが妙に明確で生々しく記憶に残ってしまう。(時々、物語の全容はぼんやりと忘れてしまっているのに、ある個所だけやけに詳しく覚えていて、「あれって何ていう作品だったっけ…」となることがあり…

モガディシュ 脱出までの14日間(リュ・スンワン)

90年代にこんなことが起こっていたなんて、という驚きがまずあるのだけど、邦画だったらアリバイ的な現地ロケとかなんちゃって外国人みたいな微妙な要素が多くなるところ、スケール感といい斟酌する必要がない規模で描かれていて(監督作でいうと『ベルリ…

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(アキ・カウリスマキ)

オフビートという表現でも生ぬるいような常道の話法を脱臼する語りで、まあこういう感じがいわゆる「ミニシアター系」というエコシステムの中でのみ育まれうる状況だったんだよな(1989年)、という感じです。全世界的にそうだったのかな?今ならどういう流…

Steppin' Out(KIRINJI)

特に兄ひとりになってからのキリンジはエレクトロニカへの傾斜があまりグッとこなくて正直物足りないところもあるのだけど、今作では久しぶりに「Runner’s High」がかつての匂いがして良かったですね。(「十四時過ぎのカゲロウ」の変奏みたいにも聞こえる。…

犯罪都市(カン・ユンソン)

ステイサム映画というジャンルがあるように、マ・ドンソク映画というジャンルが確実にできたなと思いました。それにしても韓国映画のアクション演出の的確さは素晴らしいですね。最初ハリウッドの模倣で手探りから始まった頃からすると躍進著しいと思います。…

ジャスティス・リーグ(ザック・スナイダー)

もともとザック・スナイダーが手掛けたシリーズについてピンときてなかったけれど、残念ながらこの作品も同様でした。大味というのかな…それと個人的には『ザ・ボーイズ』のおぞましい世界観が影響して、ヒーロー映画のパロディみたいについつい見えてしまう…

ゴルフは寄せとパットから考える(今田竜二)

失礼ながら今田竜二は僕がゴルフを見るようになった(というのはプレーするようになったということですが)以前に最盛期があった選手なのだけど、この本は所謂指南書というより今田選手のゴルフ観(ひいては人生観)から学べるものは?という実は変わった成…

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(クエンティン・タランティーノ)

ドラマ映画ともスリラーとも言えないような名状しがたい奇妙な映画である時点で、傑作ではあるかもしれません。公開当時の評判から結末はなんとなく予想できたけれど、そもそも「シャロン・テート事件」を知らないと、この映画が狙っているカウントダウン・…

悪夢探偵2(塚本晋也)

前作が結局「やつ」との対決だったということで、いつもの塚本作品だなというところがあったのだけど、今回はいやだいやだ…という雰囲気の醸成に徹したというか、明確な対決構図じゃないのが、よりJホラーだったのかなと思いました。(話はすっかり忘れてた…

エッシャー 視覚の魔術師(ロビン・ルッツ)

ドキュメンタリーとしては薄味だけど、なるほど戦争に翻弄された人生だった(あの時代の人は皆そうであるともいえるけど。)というのと、見ている分には錯視的な面白さに惹かれるけれど、画家としては内から湧き出る切実さに突き動かされて描いていたのだな…

バイオレント・ナイト(トミー・ウィルコラ)

物語の枠は直球でダイ・ハードかつホーム・アローンであって隠すつもりもない感じだったけれど、まだこういう見せ方があったのかという工夫が嬉しい作品でした。かつとてもウェルメイドで細部への配慮が行き届いていて、「信じる心の強さと思いやりの気持ち…

ガンパウダー・ミルクシェイク(ナヴォット・パプシャド)

正直『キル・ビル』のアニメパートをエドガー・ライトが撮ったような作品だけど、というか有体に言って『ブレット・トレイン』(物語はジョン・ウィックでありグロリア)だけど、(先日退屈過ぎて最後まで見ることができなかった)『355』より面白かった。し…

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー(デヴィッド・ロウリー)

(好きだった方は読まれないでください)個人的にはA24の良くないところが出た作品だなと思いました。気取ってるな!というか、ファインアート・フォトグラフィーを映像の連なりとして撮ったら映画になる、と思うなよ!というか。(逆にそう割り切ってくださ…

ブラック・ダリア(ブライアン・デ・パルマ)

『L.A.コンフィデンシャル』がすごく好きだったので、公開当時はデ・パルマがどのように料理してくれるのか楽しみに観に行ったのだけど、何となくぼんやりと面白かったような気はするな…という記憶で。改めて見てみると、やっぱり何となくぼんやりした映画で…

ファンタスティック・プラネット(ルネ・ラルー)

伝説的なアートアニメーションですが、ようやく見ることができました。インパクトのある画と発想が全てだけど、やはりすごかったですね。ところで諸星大二郎の絵って、完全にこの作品の影響を受けているのではないか? ☆☆☆1/2

孤独の発明(ポール・オースター)

面白いのでぜひ読んで、とはお薦めしにくいけれど(オースターが書いたという担保なしではやはり取っつきにくいと思う)、世界は偶然で出来ているのだなとか、記憶の不思議さよ…といったことについて、散文(研究書でなく)という形式でしか表せない形で書か…

マリグナント(ジェームズ・ワン)

始まってしばらくしたら話の行く先は大体想像がつくのだけど(何といってもジャンル映画なので)、悪役の造形とか展開が無茶だな(良くも悪くも)と思いました。誰もが指摘するところだと思いますが、アルジェントなどのホラーアイコンにとどまらず、デ・パ…

悪夢探偵(塚本晋也)

アマゾンにあったので再見。ものすごくJホラーの文法が活用されていて、もっといえば『CURE』だった。すごく時代を感じますね(2006年の携帯ってこんなだったっけ…とか、hitomiなあ…とか。しかし大根なのは狙いじゃないかな)。塚本監督のメジャー作品は、実…